2019年9月22日放映、「緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦」(TV東京)の企画で、上田城の堀の水が抜かれました。水の底からでてきたものは、瓦…?真田好きには、なかなかの発見がありました。
上田城ってどんなお城?

上田城は真田昌幸の築城です。関ヶ原の戦いで、徳川方が勝ち、真田昌幸が負けたあと、徳川方は上田城を壊しました。その後、別の大名によって新たな上田城が作られたものの、武士も断髪する明治には城も解体。今の上田城は、水堀と空堀が囲まれた緑ゆたかな無料公園になっています。城内には、櫓と門がありますが、残念ながら、昌幸時代の建造物ではありません。
瓦がでるとなにかいいことあるの?
はい!瓦によって過去がわかります。上田城の景観を描いた絵図に1647年成立の「信州上田城絵図」があります。この初期の絵図でも、昌幸時代にどのような建造物が城内にあったのか描いていません。
しかし、瓦が出土すれば、出土地点の近くには建造物があったことになります。また、瓦の模様には流行があり、模様を見れば、昌幸時代のものか、江戸時代のものか区別することができます。瓦の存在力、すばらしい。

今回の出土品・瓦ラインナップ
菊花文軒丸瓦

きっかもんのきまるがわら。過去に上田城では発見されているのですが、番組で初めて土から出てきた瞬間がとらえられました。菊の模様の瓦は、文字にすれば「豊臣秀吉」。昌幸時代の瓦であることがわかりました。
W(上田市教育委員会)さんが、この瓦を見た途端、最初にとった行動が、花びらの数を数えることでした。瓦はそこがポイントなんですね…!確実に今後私の瓦を見る目がかわります。専門家が出演するお堀水抜きの回は全部回収したいな。
謎の瓦

瓦の痕がうっすら残っています。用途も不明で、Wさんも、調査対象にするとのこと。とってもきになります。
真田昌幸タイプ|軒平瓦
特徴


江戸時代のものは、やわらかく削りだした風合いです。
見比べるとかなり違います。次回、上田城にいったら、瓦の図録を買わねばなりません。
真田昌幸タイプ|軒丸瓦
特徴


昌幸タイプは、中心部に線がなく、玉の数がのちの江戸時代の軒丸瓦と比べると15~18個と多め。江戸時代のものは、魂トリオの頭部分がはなれていて、尾がつながるように一周線があります。
いままで、瓦の展示は、まったく見ていなかったのですが、特徴を教えていただくと、次回から展覧会にいく楽しみがあがります。
金箔瓦は上田城から出土しているが。
上田城では、3箇所から金箔瓦が出土しています(信濃毎日新聞「上田城で金箔瓦発見」記事内に出土地を表す図があります)。また、金箔が少し残った鯱も出土しています。鯱をのせる建物が上田城にあったとは…。番組中で、堀の水が抜かれたのは、金箔瓦の出土地点が集中している、上田城北西の角でした。
金箔瓦は誰もが所持できる瓦ではなく、特定の大名や豊臣方の印であると考えられていたこともありました。最近は金箔瓦が多くの城から出土するため、各自判断で瓦に金を塗ったという説になっています。\えっ/
いずれにせよ、金箔瓦をのせる建物は、やはり誰もが見上げる天守閣のような特別な建物だったのではと推測できます。しかし、上田城の最古の絵図には天守閣の描写がないため、特別な建物があったのではという推測にとどまっています。
番組を見ると、水のなくなった堀の中には、無数の瓦のかけらが落ちていました。もし金箔瓦が大量に発見されるようなことがあれば、「特別な建物」の存在がさらに具体的になってきたのだと思います。とはいえ、450年間水に浸かった金箔瓦というものは、きらきらとすぐに顔を見せるものなのでしょうか。画面で見る限り、黒く土で汚れた瓦ばかりだったので、拾った瓦の表面をよく洗えば金箔が見えることもあるのかなと思いました。

今回発見された瓦は、上田城内にある博物館に「池の水ぜんぶ抜く人たちによる発見」として、展示されるそうです。この上田市立博物館は、撮影禁止 & 新刊(図録)をあんまりだしてくれない…ので、番組で瓦を見ることができてラッキーでした。
上田城の菊花文軒丸瓦
発見|菊花文軒丸瓦は、上田城で既に出土済。京都文禄期の伏見城の瓦と同氾または近似のものとされています。また、同時期に、真田家には伏見城動員令がでていることが注目されています。(「真田丸」2016年NHK大河ドラマ特別展、図録、p.76 滝澤正幸)
上田城の鯱瓦
鯱|この鯱瓦は、鱗表現とサイズから三層4階相当の城郭建築用の可能性がある(「真田丸」2016年NHK大河ドラマ特別展、図録、p.76 滝澤正幸)
上田城の天守閣
天守閣はない|「御天主跡(=天守)」と記された絵図はある。「上田城構之図」寛永年間(1624-1645)上田城の謎と実像(9) 2015.5.30 和根崎剛
信州上田城絵図
信州上田城絵図:国立公文書館のデジタルアーカイブでこの絵図全面を見ることができます。
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